【事例研究】特定外国子会社が船舶の買換えを行う場合

内国法人である当社(A社)は、軽課税国であるZ国に100%子会社(B社)を有しています。B社は現地にて水運業を営んでいますが、管理支配基準を満たさないことから、A社の法人税の計算上、B社の所得につきタックスヘイブン合算課税の適用を受けています。

本年、B社がZ国に所有する「Z国船籍の船舶」が老朽化したため、新規の「Z国船籍の船舶」の買換えを行い、かつ事業の様に供して損金処理を行いました。

老朽化したZ国船籍の船舶の売却額は5,000万US$で、譲渡費用は100万US$、簿価300万US$であり、新規購入したZ国船籍の船舶は7,000万US$です。

A社のタックスヘイブン合算課税の計算にどのように影響するでしょうか?

B社の合算課税対象金額を本法(日本の税法)基準で計算している場合には、租税特別措置法第65条の7(特定の資産の買換えの場合の課税の特例)第1項第十号に規定する船舶の買換えによる圧縮記帳の適用を受ける事ができることから、A社のタックスヘイブン合算課税における所得金額も当該圧縮記帳の課税の繰延べを選択することが可能です。

≪検 討≫

1. タックスヘイブン合算課税は、軽課税国等に子会社等を設立し、税負担の不当な軽減を防止する趣旨で創設された制度です。内国法人等の特定外国子会社等に該当する外国関係会社のうち①事業基準、②実体規準、③管理支配基準、④所在地国基準又は非関連者基準の全ての適用除外基準を満たさない場合に、会社単位の合算課税を行うものです。

2. 合算課税の基礎となる「基準所得金額」の金額の計算は、本法(日本の税法)基準と現地法(現地の税法)基準の選択を行うことになります(措令39の15②)。今回のケースでは、本法基準を選択している場合には、措令39の15①の規定により措法65の7①十の船舶買換えの圧縮記帳の適用が可能になりますが、現地法基準を選択している場合には、圧縮記帳の適用はできない事になります。

本法基準を選択する場合には、措令39の15①一において、「当該各事業年度の決算に基づく所得の金額につき…措法65の7…の例に準じて計算した場合に」であることから、措法65の7①十の船舶買換えに規定される「国内」は「国外」に、「内国法人」は「外国法人」に、「日本の船舶に限る。」は「特定外国子会社等の所在する国の外国船舶に限る。」と読み替えられるものと考えられます(税大論叢「外国子会社合算税制の課税上の問題についての一考察」羽島和宏著)ので、今回のケースにおいてはZ国船籍の船舶同士の買換えであることから、買換え規定の適用を受けることができるものと考えられます。

3. 今回のケースの場合には、買換えの特例の規定を適用しない(減価償却は考慮しない)時の所得金額は、(5,000万US$-100万US$-300万US$)=4,600万US$となります。

一方、買換えの特例の規定を適用した時には、①圧縮基礎取得価額5,000万US$(5,000万US$<7,000万US$)②差益割合0.92(〔5,000万US$-(100万US$+300万US$)〕/5,000万US$)と計算され、圧縮限度額は3,680万USドル(5,000万US$×0.92×80%)となることから、譲渡益4,600万US$‐圧縮損3,680万US$=920万ドルの所得が合算課税されることとなります。

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