国際相続ケーススタディ
Case Studies of International Inheritance
国際相続ケーススタディ
Case Studies of International Inheritance
Case 1. 申告
- 香港に多額の金融資産を保有しています。今まで申告も国外財産調書も提出していません。どうすればよいですか。
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私どもは、まず財産の形成過程を調べ、その結果、期限後申告や修正申告の必要性、7年の時効にかかるのか等を判断して、必要に応じて所得税については過去3年間もしくは5年間の申告書を作成し、相続税も該当する場合には申告書を作成します。併せて国外財産調書も必要な場合に提出します。
2021.8.17
ワンポイントアドバイスちなみに海外に5,000万円超の財産を保有している居住者は毎年3月15日までに国外財産調書を提出せねばなりません。これを怠ると1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金対象となります。
Case 2. 贈与
- アメリカ人の夫(米国籍)、日本人の後妻(日本国籍)、先妻の子供2人(米国籍)の家族構成です。妻は先妻の子供と養子縁組していません。今般、妻が両親介護のために日本に帰国予定です。将来、夫も日本に居住予定です。米国に10億円の金融資産があり、現時点で半分の5億円を妻に贈与するかどうか検討中です。
①夫が米国トラストで自分の死亡時に、5億円が妻に、5億円が子供(米国居住)に贈与されるとした場合の日本の相続税はどうなりますか。
②同じトラストで、その後、妻が死亡した場合は妻の相続した分も米国居住の子供に分配されるとした場合、日本の相続税はどうなりますか。 -
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①夫が米国居住中に死亡した場合、妻が相続する米国財産5億円についてのみ相続対象となります。なお、妻は50%の配偶者控除があります。夫が日本居住中に死亡した場合、全財産10億円に相続税がかかります。 妻は50%の配偶者控除が受けられます。
②米国居住の子供に相続税が課せられます。子供は妻と養子縁組していないので20%の相続税加算がなされます。
2021.8.17
ワンポイントアドバイスこのケースにおいては、日本人の妻が日本に居住する前にアメリカで贈与を受けることが重要です。また、アメリカ人の夫が日本に居住する限り、その相続人であるアメリカ居住の子供は非居住無制限納税義務者になりアメリカの財産も日本の相続税の対象になります。
Case 3. 相続・贈与
- オーストラリア在住の祖母が2000年に亡くなりました。相続人はオーストラリア在住の長男Aと日本在住の次男Bです。祖母のトラストXでAがオーストラリア不動産を相続。Aは子供がいないため、XではA死亡時には不動産を処分し、処分後の資金をBが受け取ります。ただし、その時点でBが死亡していたらBの子供4名(日本居住)が受け取るように設計されています。Bは2001年に亡くなりました。 Aは2013年にオーストラリアで亡くなりました。A所有の不動産はXに従い2014年に処分出来、Bの子供4名が各々1億円ずつ受け取る予定です。その資金を日本に送金した場合、どのような問題が起きますか。
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Bの子供4名は日本居住なので、相続税、所得税等の課税が生じるかどうか検討する必要があります。具体的にはXの日本の税務取扱いが重要となります。事例では受益者課税信託に該当していました。 A死亡に伴い、Bの子供4名が「オーストラリア不動産を処分して換価する権利」を相続しました。4名は自らの意思で処分する意思は有していませんが、不動産を直接相続したものとして相続時点の評価額で相続税の申告を行わなければなりません。この場合、相続税は20%加算されます。
2021.8.17
ワンポイントアドバイス
海外のトラスト契約では、受益者に対して財産を処分後に分配するとなっていたとしても、日本の相続税法上は、受益者がまず相続時点の財産を取得したとしてその時点の価額で相続税の計算を行い、その後処分した場合は譲渡所得の対象になります。
Case 4. グリーンカード
- 私は日本国籍を有しますが、米国の永住権を取得してグリーンカードを所持しており、今日まで長年アメリカに生活してきました。今後は日本に帰国して日本に住み続けたいと考えています。帰国後は日本の確定申告だけすればよいと思いますが、正しいですか?
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いいえ、グリーンカードを有する限りは、日本に帰国した後も、米国に米国居住者として全世界所得を対象とした所得税確定申告や財産申告の義務が継続します。
2021.8.17
ワンポイントアドバイス米国グリーンカードを有する者は、米国内に居住せず帰国等移住先の国の税制で居住者と扱われても、米国の税制では引き続き「居住者」と取り扱われます。 グリーンカードを放棄すれば、以後は米国税制で「非居住者」となります。ただし、放棄する際には、米国財産の含み損益の所得申告が必要な場合があります。 帰国をお考えの場合には、日米の税理士・会計士に相談して税務の全体像を事前に確認することをお薦めしております。
Case 5. 海外の銀行等で所有する上場有価証券の譲渡損失
- 私は日本に住んでいますが、海外の銀行の現地支店と取引があり、その海外の銀行で上場株式等の有価証券を保有して運用しています。保有する商品の一部を売却しましたが、売却損となりました。日本の所得税では、この売却損は翌年に繰り越せますか?
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いいえ、海外の銀行等で所有する上場有価証券の譲渡損失の金額は、繰り越して翌年以後の譲渡所得の金額から控除をすることはできません。
2021.8.17
ワンポイントアドバイス
①譲渡所得を計算する範囲内では通算が可能です。たとえば、その売却した同じ年に生じた他の有価証券(国内・国外を問わず)の譲渡益と相殺(通算)することは可能です。しかし、そのように通算して計算されたその年分の譲渡所得の金額が損失である場合には、他の所得と損益通算することは認められません。②また、海外での譲渡損失は、国内での上場有価証券の譲渡損失と異なり、上場有価証券の配当等の損益通算することもできません。
Case 6. 米国に帰化した元日本人の相続事例 ― 生前対策なし
- 米国国籍でアメリカ居住のXが亡くなりました。Xの相続人は全員日本国籍であり、日本居住の兄弟Aさん達「以下、Aという。」でした。Xの財産は、全てアメリカ所在の財産でしたが、生前に財産承継の対策を一切行っていませんでした。生前対策を行っていなかった今回のケースにおいて、どのような問題が生じましたか。
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日本における相続手続きの遅れが問題となりました。具体的には、AはXの訃報を知った時に、国際的な相続手続きの知識がなかったため、インターネット検索で探した日本弁護士に相談し、その紹介により亡くなったXのアメリカにおける相続手続きを代行するSを雇いました。Sはアメリカにおける相続手続きの全容等について、適時にAに情報提供を行っていなかったため、AがXの財産の全容を知ったのは、Xの死後1年半を経過した時点となりました。Aはその後に弊社へ日本における相続税の申告手続きをご相談されたため、この時点で申告期限を徒過してしまい、期限徒過に対するペナルティを日本の税務署へ支払うことになりました。
2021.8.18
ワンポイントアドバイス今回のケースでは、被相続人Xは、生前に相続を見据えた対策を何ら講じていなかったといえます。例えば、生前にXがアメリカにおいてトラスト(信託契約)を活用して財産承継の事前対策を行っていた場合には、アメリカにおける相続手続きが、長期化することなく完了させることができ、日本の相続手続きも期限内に円滑に完了することができていたはずです。従って、国際相続の一連の流れを熟知した税理士や弁護士からアドバイスを得て、生前に将来の相続における財産承継が円滑にできるよう対策を講じることをお勧めいたします。永峰・三島コンサルティングでは、お客様の状況を包括的にチェックして、様々なアプローチから生前対策のお手伝いを行っております。
Case 7. 非居住者が居住者から日本財産を相続する場合ー相続税以外の税務
- 私はアメリカに住んでいる日本の非居住者です。日本居住の父が亡くなり、日本にある賃貸不動産と父の会社(日本法人)の有価証券(2億円)を相続しました。
相続税の納税・申告のほかに気を付けることはありますか? -
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お父様の準確定申告(所得税、消費税)の申告義務があると思われます。
とりわけ所得税の準確定申告では、国外転出時課税制度が適用される可能性が考えられます。また、相続・遺贈で初めて不動産所得を得られる場合には、必要に応じて青色申告承認申請手続を要すること、家賃の支払者に受領者が非居住者である旨を伝えて源泉徴収してもらうこと、そして、消費税の納税義務者となる場合があることも、注意が必要です。2021.9.3
ワンポイントアドバイス相続人は、被相続人の最終年分の所得税及び消費税について、連帯して申告・納税を相続開始日から4か月以内に行う義務があり、これを一般に”準確定申告”といいます。所得税の準確定申告を考えますと、特に相続開始の時点で1億円以上の有価証券等を所有している居住者が亡くなり、非居住者が相続・遺贈によりこれらの有価証券の全部または一部を取得した場合には被相続人の所得税の準確定申告で国外転出時課税が適用されます。本制度では、これらの有価証券の譲渡があったとみなして、被相続人の名において譲渡所得(含み益)を分離課税(税率15.315%)で申告するものです。なお、被相続人は亡くなっているため、住民税(5%)は課されません。
歴史の長い同族会社の場合には納税額が相当に大きな金額となるケースがありますので、御注意下さい。なお、国外転出時課税制度が適用される場合には、納税管理人を届け出た方については納税猶予の特例を受けられる可能性があります。
不動産賃貸業の面では、借主が非居住者である家主に対して家賃を支払う場合には、借主側が原則として20.42%で源泉徴収して、これを納税する義務があります。しかし、借主が個人である場合で、その不動産を借主自身またはその親族の居住の用に供するために借りたものであるときは、源泉徴収する必要はありません。
なお、源泉徴収された税額は、翌年に行う家主の確定申告で控除し精算されます。
Case 8. 国外不動産の評価方法
- 父が亡くなり相続税の申告が必要になります。
日本とアメリカに不動産を持っていましたが、どのように評価するのでしょうか? -
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日本の不動産の相続税評価額は、基本的に、土地は路線価方式や倍率方式(固定資産税評価額)により、建物は倍率方式により評価を行いますが、路線価・倍率ともに課税庁が毎年定めるものです。
一方、日本以外の国・地域に所在する不動産については、課税庁が定める評価要素となる情報が存在しないため、売買実例価額や地価の公示制度に基づく価格及び鑑定評価額等を参酌して評価することになります。2021.9.3
ワンポイントアドバイス国外不動産の評価では、一部の国ではインターネットの不動産仲介サイトで詳細かつ具体的に不動産の売買履歴や売買見込価格の情報を得られることがあり、これらの情報を使用するケースもあります。
また、購入後比較的年数が経っていない物件については、過去の取得価額に、時点修正として合理的な価額変動率を乗じて評価することも可能とされています。
Case 9. 相続税―小規模宅地
- 日本居住者である母が亡くなりました。父は既に他界しており、相続人は私だけです。母は一人で母所有の家に住んでおりました。
一方私はアメリカに持ち家があり、これに5年以上住んでいますが、母から相続した家をセカンドハウスにしようと考えています。
私が母の家を相続した場合に、相続税でこの宅地について小規模宅地等の課税価格の特例による減額を適用できますか? -
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いいえできません。
お母様が亡くなった時にあなたが居住する家屋をあなた自身が所有している事実がありますので、本宅地は特定居住用宅地等に該当せず、本特例の適用を受けることができません。2021.9.27
ワンポイントアドバイス平成30年度税制改正の前は、たとえば被相続人と別居する者が日本国外に不動産を所有し、そこに長年居住していても、相続・遺贈により取得する被相続人の居住用の宅地等に対し小規模宅地の特例を適用することが可能性でありました(家なし子規定にある「その者又はその者の配偶者の所有する家屋」とは、相続税法の施行地内(日本国内)にあるものとされていたため)。平成30年度改正の後は、相続開始時に相続人が住む家屋を相続開始前のいずれかの時において自ら所有していた事実がある場合には、本特例が適用されないこととなりました。
なお、小規模宅地等の課税価格の特例制度は、この設例では適用が無いのであって、一概に日本非居住者、外国籍者、国外不動産に対して適用されないというものではありません。
Case 10. 遺言とプロベート
- イギリス人の夫が20年日本に住んだ後、日本で亡くなりました。私は日本国籍を持ち、日本で夫と同居していました。遺産は日本とイギリスに所在しています。不動産は日本に自宅1件があるのみで、その他は日本に銀行預金と上場有価証券(日本の証券会社を通じて取引する国内外の株式)が、イギリスに銀行預金がありました。
夫は日本で公正証書の遺言を残しており、全世界の財産を対象として一切の財産を私に渡す旨を指定していて、遺言の準拠法を日本に指定していました。なお、トラストやジョイント財産はありません。
この遺言があれば、全ての遺産をすぐに名義変更ができますか? -
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遺言があっても、イギリスに所在する財産(銀行預金)については、財産の所在国であるイギリスでプロベート裁判が必要となる可能性が高いです。
2021.9.27
ワンポイントアドバイス英米圏の相続はプロベートという裁判所の裁判を中心に進められる制度となっています。相続で検討する財産が英米圏に所在する「遺産」であるかぎり、特に金融財産と不動産については、遺言の有無にかかわらず、その国に所在する財産情報の開示や相続手続に際して、基本的に裁判所が発行したプロベート審判書の提出が求められる模様です。
プロベートは数年スパンの長い時間と弁護士等の代理人費用が必要となりますので、スケジュールと予算に注意が必要です。
なお本件の被相続人は日本の証券会社で外国法人の株式を保有されていましたが、証券会社からプロベートを求められず、遺言の提示のみで問題なく相続手続が完了しました。Disclaimer:読者の皆様に於かれましては、遺言の有用性およびプロベートの必要ないしプロベートに取り組むかの検討は、専門家に御相談の上ご判断下さい。本稿は弊社の過去の取扱い事例の経験に基づく筆者の私見ですので、本稿を根拠として読者の皆様が判断して行われた取引とその結果に対して、弊社及び筆者は一切責任を負いません。
Case 11. プロベートの場所
- プロベート裁判は、どこで行うのですか?
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回答はこちら
被相続人の常居所地(domicile、ドミサイル)および財産が所在する国・地域の裁判所です。ここで、遺産が被相続人の常居所地とは別の国・地域にも所在する場合には、被相続人の常居所地以外の当該財産が所在する国・地域でもプロベートを行うことがあり、このプロベートをAncillary Probate(補助的プロベート)といいます。
2022.7.26
ワンポイントアドバイス日本以外の国・地域に所在する遺産について現地の銀行等に相続手続を要請する場合に、被相続人が日本で亡くなったため常居所地である日本の裁判所で発行されたプロベート審判書の提出を現地の銀行等から求められることがあります。しかし日本にはプロベートという制度が存在せず、日本の裁判所からプロベート審判書を得ることはできません。このような場合に、その遺産が所在する国・地域の裁判所でAncillary Probateを申立てて対応するケースがあります。
Case 12. プロベートの流れ
- プロベートの流れを教えて下さい。
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一般的には、次の流れとなります。
1. 遺言執行者ないし相続人代表が裁判所に申立
2. 遺産調査、債権者への通知
3. 財産目録の作成
4. 負債の清算、資産の適宜売却換金、故人の税金その他の諸費用の清算、
遺産税と最終所得税の申告と納税
5. 遺産の分配方針の策定
6. 裁判所の承認、審判書(Grant of Probate)の発行
7. 遺産の分配、個々の財産の相続手続(名義変更、送金、口座閉鎖等)
8. 裁判所への最終報告、プロベート終了2022.7.26
ワンポイントアドバイス
一連のプロベートには半年から1年を要することが多いですが、2年以上かかるケースもあります。
Case 13. プロベートの回避策
- プロベートを回避する方法には、どんなものがありますか?
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主に、次の手法が検討されます。
1.トラスト(信託):Inter Vivos Trust, Living Trust
2.死亡時譲渡特約:Pay-on-Death, Transfer-on-Death
3.保険契約
4.ジョイント財産(合有財産):Joint Tenancy, Joint Trust with Right of Survivorshipまた、次の財産はProbateの対象となりません。
1.夫婦財産制に基づく財産:Community Property
2.公的年金(Social Security)によって遺族に支給されるお金
3.少額の遺産(金融機関、州ごとに金額基準が異なる)
4.給与の未収金
5.自動車2022.7.26
ワンポイントアドバイスこれらは一般的な理解ですので、実際の検討の際には現地の弁護士や会計士・税理士に内容とリスクを確認して下さい。
特にトラスト、ジョイント財産、夫婦財産制に基づく財産は、日本の課税関係を予定しづらいため、税務面の慎重な検討が必要です。
Case 14. 日本の相続税―日本に住む外国籍者が死亡した場合-①
- ●在留資格:被相続人が「経営・管理」、相続人が「非居住外国籍者」の場合
2023年3月1日に、日本に12年間住んだアメリカ人の父が日本で亡くなりました。相続又は遺贈で父から財産を取得した者は子である私一人です。父は日本の「経営・管理」の在留資格を有して日本に滞在していました。
一方で私は、父の死亡時にはアメリカ国籍のみを有してアメリカに住んでいました。父の遺産は日本に1億円、アメリカに3億円あり、全て私が相続で取得しました。
私は、日本の相続税を納税する義務があるのでしょうか? -
回答はこちら
はい。あなたには、あなたが相続又は遺贈で取得した相続財産のうち日本に所在するもの(1億円)を対象として、相続税の納税義務があります。
2023.4.10
ワンポイントアドバイス本ケースの様に被相続人が出入国管理及び難民認定法の別表第一の在留資格を有し、かつ相続人が日本国籍を有せず日本に住所がない場合には、2021年4月1日以後は、被相続人の日本滞在期間を問わず、日本に所在する財産のみが課税対象とされています。
なお、本相談者は相続開始日に日本に住所を有しないと仰っていますが、日本に住所を有るかどうかは客観的事実を基礎として精査する必要があります。
Case 15. 日本の相続税―日本に住む外国籍者が死亡した場合-②
- ●在留資格:被相続人が「永住者」、相続人が「非居住外国籍者」の場合
2023年3月1日に、日本に12年間住んだアメリカ人の父が日本で亡くなりました。相続又は遺贈で父から財産を取得した者は子である私一人です。父は日本の「永住者」の在留資格を有しながら12年に亘って日本に住んでいました。
一方で私は、父の死亡時にはアメリカ国籍のみを有してアメリカに住んでいました。父の遺産は日本に1億円、アメリカに3億円あり、全て私が相続で取得しました。
私は、日本の相続税を納税する義務があるのでしょうか? -
回答はこちら
はい。あなたには、あなたが相続又は遺贈で取得した全世界にある相続財産(4億円)を対象として、相続税の納税義務があります。
2023.4.10
ワンポイントアドバイス本ケースの様に外国籍者である被相続人が日本の出入国管理及び難民認定法の別表第二の在留資格を有する場合には、被相続人の日本での居住期間又は相続人の住所あるいは国籍に関わらず、全世界の遺産に対して相続税が課されます。
なお、質問外ですが、本ケースにおいて相続財産の中に有価証券、未決済信用取引及び未決済デリバティブ取引が1億円以上含まれる場合には、被相続人の死亡時に国外転出時課税(所得税)の適用がありますので、早い段階からの注意が必要です。
Case 16. 日本の相続税―日本に住む外国籍者が死亡した場合-③
- ●在留資格:被相続人が「経営・管理」、相続人が「家族滞在」の場合
2023年3月1日に、日本に12年間住んだアメリカ人の夫が日本で亡くなりました。相続又は遺贈で父から財産を取得した者は、妻である私一人です。夫は日本の「経営・管理」の在留資格を有していました。
一方で私もアメリカ人であり、日本には「家族滞在」の在留資格を有しながら8年間夫と同居して住んでいました。私は最近の8年間より前の時期に日本に住んだことはありません。夫の遺産は、日本に1億円、アメリカに3億円ありました。
私は、日本の相続税を納税する義務があるのでしょうか? -
回答はこちら
はい。あなたには、あなたが相続又は遺贈で取得した相続財産のうち日本に所在するもの(1億円)を対象として、相続税の納税義務があります。
2023.4.20
ワンポイントアドバイス本ケースの様に、被相続人と相続人がともに出入国管理及び難民認定法の別表第一の在留資格を有し、かつ相続人が相続開始前15年以内において国内に住所を有した期間の合計が10年以下である場合には、2021年4月1日以後は、被相続人の日本滞在期間を問わず、日本に所在する財産のみが課税対象とされています。
Case 17. 日本の相続税―日本に住む外国籍者が死亡した場合-④
- ●在留資格:被相続人が「永住者」、相続人が「永住者の配偶者」の場合
2023年3月1日に、日本に12年間住んだアメリカ人の夫が日本で亡くなりました。相続又は遺贈で父から財産を取得した者は、妻である私一人です。夫は日本の「永住者」の在留資格を有していました。
私もアメリカ人であり、日本には「永住者の配偶者等」の在留資格を有しながら8年間夫と同居して住んでいました。夫の遺産は、日本に1億円、アメリカに3億円ありました。
私は、日本の相続税を納税する義務があるのでしょうか? -
回答はこちら
はい。あなたには、あなたが相続又は遺贈で取得した全世界にある相続財産(4億円)を対象として、相続税の納税義務があります。
2023.4.27
ワンポイントアドバイス本ケースの様に外国籍者である被相続人が日本の出入国管理及び難民認定法の別表第二の在留資格を有していた場合には、日本での居住期間や相続人の住所や国籍に関わらず、全世界の遺産に対して相続税が課されます。
Case 18. 日本における相続手続―国際相続での相続人の確定と身分証明
- 日本にある財産について相続手続する場合に、被相続人や相続人が外国籍や外国居住者の場合はどのように相続人を証明するのでしょうか?
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回答はこちら
被相続人や相続人が外国籍者や外国居住者である国際相続の場合の相続手続は、まず日本の戸籍等の謄本で、相続人の立証のために必要で入手可能なものを全て収集します。
そして、日本以外の国地域について「帰化証明書」「出生証明書」「死亡証明書」「家族証明書」など、その関係する国地域の公的機関が発行する証明書類で、相続人の確定に資する情報を含むものを収集します。
しかし、これらの文書を収集しても相続人の立証に不足する場合には、相続手続を求める者が自ら「宣誓供述書」を作成するという方法が考えられます。宣誓供述書では、収集した証明書類で立証できない事実事項が真実であること、探索して確認した者以外に相続人が存在しない旨を紙に書き出し、これを公証人や在外公館で宣誓して公証を受けます。
この宣誓供述書を、既に収集した証明書類に添え、相続人の証明が完全であることを関係各所(法務局や銀行等)に説得することになります。
従って、国際相続の場合には関係各所と早い時期から綿密に打ち合わせを重ねることが望ましいです。
2023.5.12
ワンポイントアドバイス国際相続では、相続権を有する者の確定のために関係国の法律を参照した準拠法の判定が必要ですが、一般的には国内外の弁護士の相談を受けながら進めることになります。
「宣誓供述書」は外国の公証人や大使・領事の認証を付された私文書で、依頼者本人が供述した事実に一定の保証が与えられたものです。
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