令和3年税制改正大綱において、贈与税・相続税の納税義務者の範囲についての改正が盛り込まれました。この改正は、日本がアジアにおける国際金融センターとしての地位を確立するために、外国人ファンド運用者などの高度金融人材の日本就労を促進させたい、将来的には国際的な金融事業者の日本参入を図りたいという政策的側面があるようです。
概要
高度外国人材の日本での就労等を促進する観点から、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続等については、その居住期間にかかわらず、国外に居住する外国人や日本に短期的に滞在する外国人が相続人等として取得する国外財産を相続税等の課税対象としないこととします。
国内に短期的に居住する「在留資格」を有する者、国外に居住する外国人等が、相続開始又は贈与開始時に国内に居住する「在留資格」を有する者から取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないこととします。
※上記の「在留資格」とは、出入国管理及び難民認定法別表第一に列挙される在留資格(外交、高度専門職、医療、研究、企業内転勤、留学etc.)をいいます。
改正前は当該被相続人や贈与者の居住期間が「相続・贈与前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下である場合」(一時居住在被相続人)に限って相続税・贈与時の課税対象となっていましたが、この改正により「居住期間」の縛りがなくなり、居住期間にかかわらず、国外財産に対しては相続税・贈与税が課されないこととなります。外国人材を日本に誘致するために、在留資格を有する外国人を税制面で優遇する改正であるといえます。この改正は、令和3年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。