【コラム】小規模宅地等の特例の平成30年度改正-海外に持ち家をもつ相続人のケース

小規模宅地等の特例は、亡くなった方の居住の用の宅地で一定の要件を満たした時に、土地の評価額に対して330㎡まで80%評価減できるという制度です。配偶者及び同居していた相続人のほか、亡くなった方と同居していない親族であっても一定の要件を満たせば本特例の適用を受けることができます(いわゆる、家なき子特例)。今回はこの家なき子特例に関する平成30年度税制改正について、具体例を挙げながらご紹介いたします。

○具体例

父親は品川の自己所有の自宅(宅地300㎡)で一人暮らし。

一人息子はワシントンにある息子所有の自宅に家族で暮らしている。
  ↓
父親が死亡。
  ↓
品川の自宅を息子が相続。

建物評価額は5千万円、宅地評価額は2億円。この他に相続財産はない。

息子一家は帰国し日本居住者となり、品川の家に居住予定。ワシントンの自宅は1年後売却予定である。

改正前は、相続人である息子が、相続税法の施行地外、つまり国外に自宅を所有している場合であっても、一定の要件を満たした場合には、家なき子特例と同様に小規模宅地等の特例の適用を受けることができました。

しかし、税制改正により「その被相続人の相続開始時にその親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと」という条文が加わりました。上記のケースでは、息子は自宅を所有しているため、特例の適用を受けることができなくなりました。

この改正には経過措置があり、令和2年3月31日までの相続又は遺贈で、平成30年3月31日時点において改正前の要件を満たす場合には、改正前の要件を適用して特例が受けられることになっていました。現在は経過措置期間が終了し、いよいよ改正法が本格始動していますので、注意が必要です。

なお、具体例の場合は、下図に示す通り、改正前と後で土地の評価額が異なり、結果として6,010万円の税額増加となります。

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