国外財産調書の不提出犯の告発事案について

令和2年(2020年)6月に国税庁が発表した『令和元年度 査察の概要』によりますと、平成24年(2012年)税制改正で創設され、平成25年(2013年)の年末保有状況の報告を初回として運用が始まった国外財産調書に係る罰則が初めて適用され、個人事業に係る売上除外資金を入金していた国外預金に係る国外財産調書の不提出犯を所得税ほ脱犯と併せて告発した事案がありました。

これは、家具の輸入販売仲介業を営んでいた者が、売上代金を他人名義の預金口座に入金するなどの方法で事業所得を除外したほか、同様の方法で所得を隠し、所得税の確定申告を一切しない方法で多額の所得税を免れていたとのこと。また、多額の売上代金が入金された国外預金を有していたにもかかわらず、正当な理由なく国外財産調書を提出期限までに提出していなかったため、国外財産調書不提出に係る罰則を適用して告発に至った模様です。

なお、所得税においては、偽りその他不正の行為により確定申告書等に記載する所得税の額につき所得税を免れた者は、10年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定されています(所得税法238①)。

また、国外財産調書では、正当な理由がなくて国外財産調書をその提出期限までに税務署に提出しなかった者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると規定されています(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律10①②)。

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