第1回 収益認識(Revenue Recognition)
1. はじめに
米国では、収益認識のガイダンスは100 以上の基準が存在し、その多くはそれぞれの産業に固有の基準である。すなわち、それぞれの産業において収益認識に問題が生じるたびにそれに対応してきた結果、100以上の基準が開発されてしまったのである。
国際財務報告基準(以下、「IFRS」という。)においても、国際会計基準(以下、「IAS」という。) 第18 号「収益」及びIAS 第11 号「工事契約」の2 つの主要な収益認識の基礎をなす原則は整合していない部分もある。また、それらは単純な取引には適用できるが、複数要素契約等、複雑な取引に対して適用することが困難な場合があり、このような複数要素又は複数提供物が含まれる取引について限られたガイダンスしか提供していないという問題点を含んでいる。
そこで、国際会計基準審議会(以下、「IASB」という。)及び米国財務会計基準審議会(以下、「FASB」という。)は、主に収益認識の原則を明確化することを目的として、収益認識に関する共同プロジェクトを立ち上げた。
① 収益認識プロジェクトの目的(注1)
このプロジェクトの目的は、以下のとおりである。
(a) あらゆる産業に適用可能な単一の収益認識モデルを提供すること。
(b) 従来の欠点を補うように、特定の資産・負債の変動を基礎としたモデルを開発すること。
(c) IFRSと米国会計基準のコンバージェンスを行うこと。
② 概念フレームワーク(注2)における認識と測定
新たな収益認識プロジェクトを理解するために、概念フレームワークにおける認識と測定の基礎について触れておく。
「取引(事象)に対して会計処理を行う」とは、簡単に言うと、資産、負債、資本(持分)、収益、費用等(財務諸表の構成要素)を財務諸表に計上することである。すなわち、IASの概念フレームワークでは、次の2つの過程(プロセス)を経て財務諸表が出来上がると考えられている。

③ 従来までの収益認識の考え方
例えば単純な商品の現金販売の仕訳を検討してみよう!
概念的には、顧客がレジに商品を置いて支払いを行ったときに契約が生じ、お店は商品を引き渡す義務を負う。お店と顧客は文書により契約条件を合意しているわけではなく、単に「あなた(顧客)が私(お店)に値札の価格を払えば、私はあなたに商品を引き渡す」というものである。
この取引は次の3つのプロセスに分解することができる。
(a) 契約の締結
(b) レジでの商品の引渡
(c) 顧客による代金の支払い
【認識のタイミングの問題】
この例題では、上記の3つのプロセスがほぼ同時に起こるので、それぞれのプロセスにおいて取引(事象)の認識は行われない。しかし、あえて言うのであれば商品のレジでの引渡時に「認識」を行うことであろう。
【測定の問題】
(取引の前提)
基本的には、このような販売契約は第三者どおしの契約であり、その取引価額は公正価値であろうという暗黙の前提が存在した。

そこで、借方の現金受領額は契約書によって決定されている。
ところが貸方の売上の金額はどのようにして決定していたのであろうか?ここでの測定の考え方のプロセスを示してみよう。
・ 複式簿記を採用している以上、借方と貸方の金額は同額である
・ 借方の売掛金金額が契約書上100であるならば、貸方の売上金額も100であるに違いない。
・ よって、売上金額も100としていた。

結果としては、現金受領額が売上金額と一致しているのである。これは別な言い方をすれば、キャッシュ・フローと売上という利益が一致していることになる。
(従来の収益認識における問題意識)
この測定の考え方のプロセスをとる限り、売上金額の測定そのものに問題が生じることはないので、議論は売上の認識のタイミングに絞られることになる。よって、今までは収益認識の問題となると、主に認識のタイミングの問題に焦点が当たっていたと考えられる。
(注1) IASB Home Page “Revenue Recognition”,“Why is the Board undertaking the project?”
(注2)企業会計の基礎にある前提や概念を体系化したもの


