【IFRS】収益認識再公開草案の要点
2011年11月14日にIASBから公開草案「顧客との契約から生じる収益」が再公表されました。本公開草案について、その改善の経緯及び要点を解説します。
1.なぜ収益認識基準を変更する必要があったのか
財務諸表の利用者は企業業績及び将来予測を評価し、他の企業と比較するために収益の情報に依存することとなるが、既存のIFRSおよびUS GAAPでは、財務諸表利用者によるそのような評価及び比較が困難であった。すなわち、既存の基準には次のような矛盾や弱点が存在していた。IFRSにおいては、IAS18「収益」,IAS11「工事契約」における、限定された指針や複雑な取引への適用の難しさといったことから、多様な収益認識の実務が醸成されており、さらにいくつかの企業においては、そのような限定されたIAS18を補うためにUS GAAPが選択的に適用されていた。またUS GAAPにおいては、多くの産業や取引に特異的な基準の存在によって経済的に類似の取引が、異なる方法で会計処理されていた。
また、IFRS及びUS GAAPにおける開示基準は、財務諸表利用者が企業の収益、およびそれらの収益認識において当該企業による判断や見積について理解するためには不十分な情報となっていた。特に、形式的に開示された収益情報について懸念されていた。
2.基準審議会の提案
上記のような欠点を解決するために、収益およびいくつかの契約コストに係る認識、測定及び開示のためのしっかりとした包括的な枠組みを提供するために、本公開草案を開発した。本公開草案の採用によって、収益認識に係る基準は、
● 企業、産業及び市場間の収益認識実務の比較可能性を向上させ、
● 企業が参照するべき要求事項の減少によって、財務諸表作成を簡素化し、
● 立ちはだかる収益認識問題を解決するための、個別対応ベースでの解釈指針の必要性が減少し、
● 改善された開示基準を通して、財務諸表利用者により有用な情報を提供することとなる。
3.収益認識の枠組み
公開草案は、企業が収益をいつ認識し、どのくらいの収益額が認識されるべきかについて対処している。本公開草案の核となる原則は、企業は約束された財又はサービスとの交換によって受け取る権利を有すると見込まれる対価を反映する額で、当該財又はサービスの顧客への移転を描写するように収益を認識すべきである、というものである。
収益認識は以下の5つのステップにより行われる。
<STEP 1>顧客との契約の認識
企業は顧客と合意された各契約における法的拘束力のある権利義務に対して本公開草案を適用する。場合によっては、企業は契約を結合して1つの契約として会計処理することとなる。
<STEP 2>契約における個別の履行義務の識別
契約は、顧客への財又はサービスを移転するという約束を含んでおり、これらの約束は履行義務と呼ばれる。企業は明確に区別できる財又はサービスを移転する履行義務に対して別個に会計処理を行う。財又はサービスが明確に区別できるとは、企業によって通常別個に販売されているかどうか、あるいは顧客に対して便益を提供しているかどうかである。しかしながら、財又はサービスが契約において高度に相互依存的に結合されており、企業が顧客と契約したアイテムに当該財又はサービスを一体とすることを約束している場合には、区別不能となる。
<STEP 3>取引価格の決定
取引価格は、約束された財又はサービスの顧客への移転に対して、企業が受け取る権利を有することとなる対価(支払)の額である。通常、取引価格は固定された顧客からの対価の額であるが、変動可能な見積の対価であったり、現金以外のものであったりする。取引価格は、貨幣の時間価値の影響や顧客への支払対価によって調整される。信用リスク(回収可能性)の影響は、取引価格には反映されない。その代わりに、当該影響は収益の次に独立掲記されることとなる。
<STEP 4>取引価格の配分
企業は、別個の財又はサービスの独立した販売価格を基礎として取引価格を別個の履行義務に配分する。独立販売価格が観察不能である場合には、企業はこれを見積ることとなる。取引価格は、割引や、契約における履行義務の1つに完全に関連した不確実な対価の額を含むことがある。本公開草案は、企業が割引や不確実な対価を契約におけるすべての履行義務よりはむしろ1つの履行義務に配分すべき時期を特定している。
<STEP 5>履行義務充足時の収益認識
企業は、顧客への約束された財又はサービスの移転によって履行義務を充足した時(顧客が当該財又はサービスの支配を獲得した時)に収益を認識する。企業が認識する収益の額は、充足された履行義務に配分された取引価格である。履行義務はある一定時点(財の顧客への移転)あるいは時の経過(サービスの顧客への移転)により充足される。時の経過とともに充足される履行義務については、企業は、履行義務が充足されるに従って認識されるべき収益の額を決定するために適切な測定方法を選択する。提案された基準では、企業が認識する累積的な収益額は、企業が合理的に受け取る権利が保証される範囲に限定している。
4.その他の提案
<不利な履行義務>
審議会は、企業が不利な履行義務に対する負債を認識すべきであることを提案している。不利な履行義務とは、履行義務を充足するための最低コストが当該履行義務に配分された取引価格を超過する場合である。また不利であるかどうかを判定する範囲は、1年超にわたって充足される履行義務に限定される。例えば、3年で完成するビル建設工事契約などである。仮に、財を顧客に損をもって移転することを約束している場合には、当該棚卸資産自体が既存の基準に従って減損の対象となる。
<契約コスト>
企業は、契約獲得のための増分コストについて、将来の回収が期待される場合には資産として認識する。他の基準の範囲に含まれていない契約充足のためのコストについては、以下の条件を満たす場合には資産として認識する。
● コストが契約に直接関係している(あるいは特異的に期待される契約)
● 将来の履行義務充足に使用される企業の資源を生み出すかあるいは増強することとなるコスト
● 回収可能性であること
<開示>
財務諸表利用者が、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、額、時期および不確実性をより良く理解することを可能とするために、審議会は企業が定量的及び定性的な情報を開示することを提案している。
● 顧客との契約の内容
● それらの契約に提案された基準を適用する際に行われた重要な判断及び判断の変更の内容
● 顧客との契約を獲得あるいは充足するためのコストから認識された資産
以上


