第2回 収益認識(Revenue Recognition)
- ディスカッション・ペーパー
IASBは2008年12月にディスカッション・ペーパー「顧客との契約における収益認識についての予備的見解」(以下、「DP」という。)を公表した。
① DPの適用範囲(注1)
ここで提案している収益認識モデルは、「顧客(注2)との契約(注3)」に適用される。
しかし、以下の商品や契約を適用対象外としている。
(a) 金融商品及び一部の非金融商品の契約で、IAS 第39 号「金融商品:認識及び測定」やSFAS 第133 号「派生商品及びヘッジ活動に関する会計処理」の対象となるもの。
(b) IFRS 第4 号「保険契約」及びSFAS 第60 号「保険企業の会計処理と報告」(及びその他の関連する米国会計基準)の対象となる保険契約。
(c) IAS 第17 号「リース」及びSFAS 第13 号「リースの会計処理」(及びその他の関連する米国会計基準)の対象となるリース契約。
② 認識
(a) 契約に基づいた収益認識原則
このDPにおいて、収益認識は資産の増加及び負債の減少に依拠するため、収益認識モデルは関連性のある資産又は負債を特定する必要がある。そこで特定の資産・負債たる顧客との契約に焦点を当て、収益はこの契約における企業の正味のポジション(権利と義務の組み合わせ)の増加を基礎として認識されなければならないとされている。
顧客との契約は、企業に顧客から対価を受け取る権利をもたらし、顧客へ(財やサービスの形で)資産を移転する義務を課す。(DP 2.23)
まず、契約締結時に、対価請求権(顧客から対価を受け取る権利)と履行義務(顧客へ商品やサービスの形で資産を移転する義務)を、以下のように認識する。
(概念的な仕訳;実際にはこのような仕訳は行わない。)(注4)

企業が顧客との契約の当事者となるとき、当該契約における権利と義務の組み合わせが契約における正味のポジションとなる。
上記の仕訳における正味のポジションは以下の通りとなる。

この契約資産又は負債は、企業の残存する権利及び義務に対する契約における正味のポジションを反映している。
当該契約における正味のポジションが契約資産となるか、契約負債となるか又は貸借ゼロの正味のポジションとなるかは契約における残存する権利及び義務の測定によって決まる。
従来は、貸方である売上金額そのものの直接の測定は行われず、借方の現金受領額(=測定値)を用いて売上金額を測定していたのであるが、このDPでは借方の現金受領額と貸方の売上金額が必ずしもイコールであるとは限らないことが前提となっている。すなわち、借方項目(対価請求権)、貸方項目(履行義務)の両方ともに貸借対照表項目として認識したのであるから、それに対して別個に測定を行わなければならないのである。
下記の表は顧客及び企業の履行が、企業の正味の契約ポジションに与える影響をまとめたものである。

この収益認識モデルにおいては正味の契約ポジションの変動によって収益が認識されるが。その可能性のある変動は2 つの時点で生じる。
(i) 契約締結時点
契約開始時において企業が収益を認識するには、以下の関係が成立しなければならない。
対価請求権の測定値>履行義務の測定値
これは契約資産の増加であるため、収益認識につながることとなる。
(ii) 契約における義務の充足時点
契約における義務の充足は契約資産の増加又は契約負債の減少につながるため、それは収益認識につながる。
(注1)DP S10 – 11
(注2)顧客とは「企業の通常の活動のアウトプットを表す資産(財又はサービスのような)を得るために、当該企業と契約を締結した当事者」をいう。(DP 2.21)
(注3)契約とは「強制可能な義務を生じさせる複数の当事者間における合意」をいう。(DP 2.11)
(注4)対価請求権と履行義務の測定値が異なるケース
(次回は「②認識 (b)履行義務の識別及び(c)履行義務の充足」を予定しております)


