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EFRAGのFlores副議長との対談

EFRAG副議長と対談                   2010年3月10日
~IFRSの動向について~

2010年3月10日にEFRAG副議長のFrançoise Flores氏と樋口哲朗先生をお招きして、
IFRSの現状と今後の日本におけるIFRS導入についての意見交換を行いました。

Francoiseさん
(写真は左から、樋口哲朗先生、Flores副議長、永峰代表)

<永峰代表>
本日は貴重なお時間を頂きまして、大変有難うございます。ご存じのとおり、日本では2015年を目途にIFRS導入を検討しております。EFRAGの副議長をされていらっしゃいますFlores副議長は2005年にEUでのIFRS導入という貴重なご経験をお持ちだと思いますが、Flores副議長の視点から今の日本の状況をどのようにご覧になられていますでしょうか。

<Flores副議長>
日本がIFRSの導入に積極的であることを大変うれしく思っています。もちろん導入すると決定した訳ではありませんが、これまでの私の経験から考えますと、米国が2011年のIFRS導入意思決定を再確認したことなども合わせて、よほどの事が無い限り、日本は2012年にはIFRS導入について結論を出すと思います。IFRSに関する前向きな動きや議論も多く重ねられており、日本経済がIFRSの導入に向けて力強く前進していることは明らかであり、この点については大変うれしく思います。

<樋口先生>
さて、27カ国からなるEUにおいてIFRSを導入するためには、意見をまとめ上げることが必要不可欠であり、少々古い専門用語ですが、そこに「ハーモナイゼーション(調和)」、この「調和」のようなものがEFRAGの根底思考ではないかと推察します。数年前までは日本でもIFRSとの「調和」を目指していたのですが、現在はIFRSへの「コンバージェンス」に向かっています。日本の会計に対する考え方とEFRAGの考え方は大変似ていると思っています。私がASBJのスタッフ時代には、いつもASBJの委員をされている方々にIASBとの共通の認識を持つために、EFRAGを訪問し、テクニカルな問題について議論を重ねて意見を交換した方が良いといつも説得しておりました。

<Flores副議長>
実際にその通りだと思います。最近のASBJとの会議では、ほとんどすべての課題に合意をみることができており、今や私たちは同じ方向に進んでいます。これは驚異的なことです。今回の日本訪問もその成果であると思います。ASBJとEFRAGは大変緊密な連携を取り始めています。というのも、これからはIFRSを導入しようとしている2大経済大国(日本及び米国)の存在をIASBに意識させることが大切だからです。EFRAGとASBJがお互いにもっと意見交換をしていくことが重要だと思います。

<樋口先生>
EFRAGはIASBと定期的に会議を行っていますが、その度にIASBのボードメンバーやスタッフも参加されているとお聞きしています。

<Flores副議長>
IASBのメンバーは毎回の会議に参加してくれますので大変助かります。少なくとも一人のボードメンバーが参加しており、様々な課題ごとにその責任者を派遣してくれます。その責任者たちは私たちの議論に大変興味を示しており、時には難しい局面もありますが基準の完成に尽力してくれています。IASBは数多くの議論を重ねていますが、時として議論の方向性が迷走するような場合には、私たちEFRAGメンバーが適切なアドバイスをすることにより、議論の道筋を明確にすることができます。私たちは大変良い関係にあると思っています。

<樋口先生>
2005年のヨーロッパにおいてIFRSを導入したときの状況について、Flores副議長の経験も交えてお話をお聞きしてもよろしいでしょうか。多くの日本企業が今知りたいことは、どのようにしてIFRSを導入すれば良いのか、という点だと思います。

<Flores副議長>
ご参考になるかどうかわかりませんが、大切なことは、早めに準備を行うということです。IFRSを導入することは企業にとっても大変な変革であり苦労を要することです。しかし、しっかりと準備ができた企業であればあるほど、より早期に動き始めることができるのです。準備には社内研修も含まれますが、これが大変重要です。まず、取締役やその他の経営幹部は当然IFRSの知識を吸収してもらわないといけませんから、これらの人々に対する教育から始めます。もちろん、IFRSの細部に渡るすべての理解は必要ありませんが、経営の根幹に影響する変化は認識すべきです。

<永峰代表>
IFRSは会計というよりは、まさにファイナンス、あるいはその種の学問を基礎としている基準であるため、現在の実務からの大きな方向転換となるでしょう。日本の多くの会計士はこの点をあまり理解していないように思います。実際にIAS(International Accounting Standards)からIFRS(International Financial Reporting Standards)となり ”Accounting(会計)” はもはやそこには存在しないのです。IFRSも会計の範囲内であり、小さな変化であると思われているため、将来のIFRS導入に際して準備をしていない会計士も多くいると思われます。

<Flores副議長>
2つのことを言わせて頂きますと、過去に日本基準が通ってきたコンバージェンス・プログラムも踏まえて、日本基準からのIFRS導入については、すでに明らかな方向性が認識されています。問題は、日本企業が適用するのは現在のIFRSではなく、2011年6月時点における大部分の改訂作業が終了した新しいIFRSなのです。ですから、これからでも十分な準備をすることは可能です。すでに現行のIFRSを適用しているヨーロッパの企業も同じように、2011年6月には新しいIFRSに準拠して、部分的には変更が必要となりますが、当初導入した時と同じくらい大変な変更であると認識しています。日本においては、これに日本基準との差異が追加されるため、ヨーロッパの企業と比較するとさらに大変になるでしょう。

<樋口先生>
特にMoU項目はすぐにやってきますね。そしてこれらの事項は我々に重大な衝撃をもたらすと思います。たとえば収益認識や、年金、連結などです。これまでは日本は細則主義の会計に慣れてきましたが、IFRSでは原則主義の基準となります。私たちは最初から完璧なものを目指そうとしますが、ヨーロッパではまた違ったアプローチがあるように思うのですがいかがでしょうか。

<Flores副議長>
確かにヨーロッパでは最初から完璧なものを作ろうということはありませんでした。IFRSの解釈の問題が一番大きな問題だと思います。すなわち、企業が初度適用において、その判断が正しいのかどうかについて確信を持つことは難しい事だと思います。しかし、これは経験による知識の蓄積によって企業側の考え方が次第に確立され、これによって解決されることであると思います。原則主義においては、一度基準に則した考え方の方向性を確立した後は、それに従って会計処理の判断をすることができるようになります。日本人もすぐに原則主義のIFRSに慣れると思います。ヨーロッパの経験からも明らかです。

<樋口先生>
昨年、日本の金融庁がIFRS適用についていくつかの報告を出したことはご存じかと思いますが、会社の意思決定プロセスが大変重要であり、それゆえ、会計マニュアルの中に意思決定プロセスを盛り込むべきであることが言われています。私の経験ではヨーロッパのほとんどの企業は会計マニュアルを作成していますが、日本企業では、日本語のマニュアルでさえも存在しない場合があるのです。この点について、どのようにお考えでしょうか。

<Flores副議長>
全く同感です。クライアントがIFRSを導入するその場に参加してきたことから考えますと、重要なことは、企業の会計マニュアル作成の準備に助言をしたことでした。また、フランスの主要な上場企業は英語の会計マニュアルを作成していました。なぜなら、大企業は世界中に多くの子会社を有しているからです。会計マニュアルの作成に助言をすることは、会計事務所の間違いなく重要な業務の一つです。

<永峰代表>
リーマンショック以降、米国流の資本主義に対して圧力のようなものがあるのではないでしょうか。IFRSの主要な目的の一つは投資家に対する報告ですが、しかし、現在の経済状況にあってはIFRS適用に消極的は影響があるのではないでしょうか。リーマンショックの後でも、ファイナンス理論、すなわち、DCF法やその他の市場価値といった測定手法を中心とする流れは変わらないのでしょうか。

<Flores副議長>
経済危機以降、ヨーロッパは日本で公正価値会計に対する見方が消極的になっていますが、それは、公正価値会計が妥当ではないということを意味している訳ではないと思います。公正価値会計はいくつかの場合には明らかに妥当であり、これは誰もが同意しています。問題があるのは観察可能な価格が入手できない場合や、あるいは観察可能なインプット価格を基礎に見積りを行う場合です。このような場合の見積りは経済的価値において意味のあるものかどうか議論が分かれ始めています。指標として市場価値を用いるかどうかが、財務諸表利用者にとって意味のあるものかどうかについては、これは妥当であると思います。なぜなら、市場価値は企業の将来キャッシュフローであり、これは企業の営業によって強い影響をうけるからです。客観性を求めるならば、観察可能なデータ等を見る必要があります。さらには、EFRAGによるプロアクティブ活動として、近い将来には企業のビジネスモデルと財務報告との関係を認識しようとするプロジェクトがあります。ビジネスモデルを考慮することは妥当であり、妥当であるというのは、それが客観的であるからなのです。実はこれがIASBがIFRS9号で実施しようとしていることなのです。FASBは金融商品をすべて公正価値で測定しようとしていますが、純損益とその他の包括利益に報告されるものを区別しようとしています。つまり、ビジネスモデルを考慮しようとしているのです。この考え方がヨーロッパの視点に入り込んで来ていますが、これによって客観性や情報の質を低下させるものではないと考えています。
日本でのIFRS導入決定は2012年であると理解しています。米国は早期適用を否定しましたが、日本では早期適用を認めています。ここ何日間にお会いしてきた人々からIFRS導入を決定するという強い意欲を感じました。まだ決定はされていませんが、前向きに進んでいる事は間違いないと思います。日本でUSGAAPがもはや認められなくなることは、米国にとって相当の圧力になると思います。

<樋口先生>
確かに大企業では日本経済の存在を世界にアピールするためにも、IFRS導入に好意的な人が多いように思います。IFRSを導入しない方向で議論が進むことになるとは考えにくいと思います。

<永峰代表>
概念フレームワークはIFRSとUSGAAPで重なる部分が多く大変似ていると思います。米国もIFRSを導入することにおおきな問題は無いように思います。しかし、両者の概念はなぜそんなに似ているのでしょうか。これは、度重なる議論、意見交換をおこなっているからなのでしょうか。

<Flores副議長>
IFRSを導入する前に、概念レベルでの変更は必要であり、IASBとFASBの定例会議での議論では、IASBはFASBに大きな影響を及ぼしたと思います。そして、IFRSコンバージェンスの過程に透明性をもたらしています。両者がコンバージェンスに向かって前向きに進んでいる事は明らかです。議論を重ねることは大変有意義なことであり、これによって考え方を見直すことができ、あるいはよりその考え方に対して確信を持つことができるようになるのです。

<永峰代表>
中国の影響をどのように見ていますか。最近IASBは中国政府からの高官を受け入れました。これにより、中国がIASBの組織に与える影響は何かありますか。

<Flore
s副議長>
日本もリーダーシップをとっていると思います。世界規模での議論をすることが私の希望であり、誰もが最善を尽くすでしょう。将来的にはEFRAGとASBJとの間にも交流が生まれ、アジア・オセアニアの基準設定団体の設立に発展するかもしれません。このような相互交流は世界規模で認められ、そして現実となるべきです。もちろん世界中の人々は違った視点を持っていますし、根本的な問題に対して大変強い主張があるかもしれませんが、それは世界で共有することができるものであります。

<永峰代表>
残念ながらお時間がきてしまいました。EFRAGがIASBにおける基準設定に関して大変重要な役割を果たされていること、また、従来及びこれからの基準設定の在り方等について大変貴重な体験及びご意見をお伺いできたことを嬉しく思います。本日は本当に有難うございました。



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